いろいろな業界でこんな言葉が聞かれます。「お客様の立場で考え、サービスをします。」でもそれを本当に実践するのは、口で言うほどたやすいことではありません。
コンサル先の職員が、こんな提案をしてきたことがありました。「お部屋を家庭的な雰囲気にしたいので、蛍光灯を電球色に変えてもいいですか?」と。利用者に確認したの?と質問すると、「聞いていません。」ということは、主観でしかないのです。その職員にとっては、「電球色=家庭的」なのでしょう。もしかすると多くの人にとってもそうなのかもしれませんが、肝心の利用者にとってもそうなのかは、また別の話です。
こんなこともありました。食後に当たり前にように、熱い日本茶をお出しすると「冷たい麦茶」がいいと。高齢者=熱い日本茶が好きなはず・・・。これも勝手な決めつけなのです。
私たちはお食事の際に、「おいしいですか?」と声をかけることも禁じています。そう聞かれれば、たいていの方は「おいしい」としか答えられないからです。なぜなら利用者は職員に対して、「世話をしてもらっている」という、ある種の負い目をお持ちになりがちです。そこから見えない上下関係のようなものが生じる場合もあります。知らず知らず、介護者が「上から目線」になっていることも少なくありません。
そうした配慮のない声掛けでは、本当の感想やご要望を引き出すことなどできないのです。
熱中症や感染症を予防するために、「水分をしっかりとりましょう」という声掛けがありますが、これも職員のひとりよがりに過ぎません。「しっかり」とはどれくらいの量なのか、誰にもわからないからです。
まずは職員自身が、体に必要な水分量を勉強すること。そして身近にあるものを使って、例えば「この湯呑で何杯」のように、具体的に声をかけて初めて、本来の目的の達成ができます。
利用者の目線に立つのは、本当に難しいことです。なぜなら、「わたし」と「あなた」は違うからです。この当たり前なことに、気がつくこと。そこから本当のサービスは始まるかもしれません。おしつけになっていないか。傲慢になっていないか。自己満足になっていないか。今の声かけが、いまのケアが、本当の利用者様の皆様のためになっているのか。私たちは、常に自問自答を続けています。
弊社では、上記の想いに共感していただき、クライアントに対し正しく伝えることができる方を募集しております。